【姿勢の専門家監修】なんとなく不調を感じる人へ。目的別に整える、やさしいストレッチ習慣

朝起きてもスッキリしない。肩が重くて頭がぼんやりする。夕方になると脚がむくみ、腰までだるくなる。「なんとなく調子が悪い」という感覚を抱えながら、毎日を過ごしていませんか?

多くの人は、そうした不調を、疲れや年齢のせいと考えがちです。しかし整体の視点から見ると、実はこれらの原因の多くは身体の歪みと使い方の偏りにあります。

疲労を感じやすい、肩こりが取れない、なんとなく不安定。そんな、なんとなく不調の正体を知り、無理なく整える方法が、ストレッチによるセルフケアです。

「人の身体は本来、とても正直です。痛みやだるさは悪いことではなく、“助けて”というサイン。歪んだ姿勢や動かさない筋肉を整えれば、自然とラクになっていきます。」(小林 篤史)

参考書籍:「歩くだけで効く!おさんぽ整体(小林 篤史)」

不調の根本にある「歪み」と「硬さ」


身体のバランスが崩れる原因は、大きく分けて2つあります。ひとつは、骨格の歪み。もうひとつは筋肉の硬さです。

同じ姿勢で長時間過ごす、片側の肩でバッグを持つ、スマートフォンを見るときに首を前に倒す。こうした日常動作が積み重なることで、身体の一部だけに負担がかかり、骨盤や背骨、肩甲骨などがわずかにずれていきます。

すると、筋肉はそのズレを支えようとして緊張し、血流が悪化。老廃物が溜まり、だるさや重さとなって現れます。腰痛や肩こりといった結果ではなく、その前段階にある姿勢の崩れを整えることが大切です。

「痛みの原因は、実は離れた場所にあることが多いんです。たとえば腰が痛いとき、太ももや背中に原因があるケースも少なくありません。筋肉のつながりを整えていくことが大切です。」(小林 篤史)

ストレッチで整える3つの基本

整体の考え方に基づいたストレッチでは、呼吸・意識・姿勢の3点を大切にします。 闇雲に身体を動かすよりも、整えるための伸ばし方を身につけることが効果を高める鍵です。

01. 呼吸を整える

深い呼吸は、それだけで自律神経のバランスを整えます。鼻からゆっくり息を吸い、口から細く長く吐く。3秒で吸って6秒で吐くようなリズムを意識しましょう。

ストレッチ中に呼吸を止めると筋肉が緊張してしまいます。息を吐きながら筋肉が伸びていく感覚を味わうことで、より深くリリースされていきます。

「呼吸が浅いとき、人は無意識に身体を守るように固めています。息を深く吐くと、“もう大丈夫だよ”と身体が安心する。そこから本当のリラックスが始まります。」(小林 篤史)

02. 伸ばすより“ゆるめる”

一般的にストレッチというと、筋肉をぐっと伸ばすイメージがありますが、整体的なストレッチでは“ゆるめる”ことを重視します。

硬くなっている部分を力任せに伸ばすと、筋肉が防御反応を起こして逆に固まってしまいます。無理をせず、気持ちいいと感じる範囲でゆっくり動かすのがコツです。

「頑張るストレッチではなく、“ほどけるストレッチ”を。力を抜いたほうが、身体はずっと早く変わります。」(小林 篤史)

03. 骨盤の位置を意識する

身体を整える軸となるのが骨盤です。立っているときも、座っているときも、骨盤が立っている状態を意識するだけで、筋肉の使い方が変わります。

骨盤が立つと背骨が自然に伸び、肩や首の負担も減ります。ストレッチを行う際も、骨盤をまっすぐ立てた姿勢で行うことが大切です。

「骨盤が整うと、全身の連動がスムーズになります。逆に、骨盤が傾いたままでは、どんなにストレッチをしても根本的な改善にはつながりません。」(小林 篤史)

目的別ストレッチガイド


ここからは、よくある不調別におすすめのストレッチを紹介します。どれもかんたんで、1日5分から取り入れられるものばかり。呼吸を合わせながら、ゆっくりと身体を感じていきましょう。

姿勢を良くしたい

<ひざ裏伸ばし>
お年寄りの姿勢をみているとひざが曲がったまま立ったり歩いたりしている人を見かけます。これは太もも裏の筋肉(ハムストリング)が強張っている状態。ストレッチでひざ裏を伸ばすことで、ひざ本来の柔らかさを取り戻します。ひざにかかる負担が減り、ひざ痛も楽になってきますよ。
  1.  イスに浅く腰掛け、左足を前に伸ばす
  2.  左ひざの上に両手を重ね、下方に圧をかけて10秒キープ
  3.  足を交換して1〜2を同様に行う
改善ポイント
  • 曲がったままのひざを伸ばす→姿勢の改善
  • ひざ痛の改善
  • 血行改善・むくみの解消

<超股割り>
リモートワークや長時間のデスクワークなどで運動不足になることで、股関節の動きが悪くなっている人が増えています。股割りの姿勢で内転筋を動かすことで、股関節の動きをなめらかにすることができます。
股関節がゆるむことで、腰痛にも良い影響がもたらされますよ。
  1.  両足を肩幅より広めに開き、つま先をそれぞれ外に向けたら、両手をひざ付近にあて、上半身をできるだけ地面と垂直に保ちながら、腰をまっすぐ下に落としていく
  2.  自分のできる範囲でいいので腰を落とせる限界まで落としたら、そこで10秒キープ
改善ポイント
  • 内転筋群の強化
  • 股関節の動きをスムーズにする
  • 腰痛の予防・改善
「日常的に運動をしていない方は、深く腰を落とすことが難しいかもしれません。無理をせずにまずは腰を浅く落としてストレッチしましょう。」(小林 篤史)

肩こりの解消

<振り子運動>
肩こりで悩む人の多くは、肩に力が入ったままの状態になっています。振り子運動で肩をほぐすことで、肩の緊張を解除しリラックスさせることができます。
続けることで肩の血流が改善し、余計な筋肉のこわばりをリラックスさせる効果も期待できます。四十肩、五十肩で肩が固まってしまった人はぜひ取り入れてみてください。
  1. ダンベル(1kg程度)を用意
  2. 左手をテーブルについて、体を軽く前傾させる。右手にダンベルをもち、ダンベルの重みを感じながら、だらんと腕をたらす
  3. 30秒間、ゆっくり右手をゆらす
  4. 手を交換し、左手でも同様に行う
改善ポイント
  • 肩の周辺の筋肉の緊張の解除
  • 肩がリラックスし、疲れが抜けやすくなる
  • 腕がよく触れるようになり、歩きやすくなる
  • 四十肩、五十肩の予防・改善
「ダンベルは握りしめずに。親指以外の4本の指でひっかけて、ダンベルの重みで自然に揺らすことを意識しましょう。」(小林 篤史)

下半身やせ

<後ろ蹴り>
リモートワークやデスクワークで座りっぱなしの生活が続くと、骨盤がまっすぐ立たなくなり、下半身に脂肪がついたり、おしりがたれてきてしまいます。
シンプルな動きですが、大殿筋の強化にとても役立つ動きです。足は大きく動かしすぎす、心地よいと感じる範囲で行いましょう。
  1. 壁やイスの背などに手をついて立ち、左足を後ろに上げる。そのまま10秒キープ
  2. 同様に右足も行う
改善ポイント
  • 大殿筋を中心としたおしりの筋肉の強化
  • たるんだおしりの引き締め、ヒップアップ効果
  • 綺麗な姿勢をつくる
「後方に上げた足のひざは曲げずに、できるだけまっすぐ伸ばす。腰はなるべく反らさず、股関節のみを動かすように意識しましょう。」(小林 篤史)

おなかやせ

<おなかの肉撃退法>
ぽっこりおなかの原因のひとつに、姿勢の悪さがあります。この動きは物理的に力を加えて、おなかの肉を腹部にしまい込みます。
また、ぽっこりおなかの人は反り腰を併発していることも多く、お腹を少し深く押すことで人によっては奥にある腰椎にふれることができます。特に反り腰の人は余計に前方に背骨が出ている傾向があるため、物理的に腰の反りを戻すように働きかけることができます。
  1. 両手を使ってぽっこり出ている余った肉を中心に寄せ、それをお腹に収納させるようなつもりで押し込む
  2. しまい込んだところを両手で押さえ、10秒キープ
改善ポイント
  • ぽっこりおなかの改善、おなかが引っ込んだ状態をキープしやすくなる
  • 反り腰の改善
  • 尿漏れの予防・改善
「同時に下腹部を引っ込めるように力をいれると効果的です。」(小林 篤史)

スマホ首の解消

<ねこ首反らし>
ねこ首とは、ねこ背に伴い、あごが前に出て首が伸びたり、逆に、あごが後ろに引っ込んで首が埋まったりした状態をいいます。ねこ首により不自然なあごの位置が原因で、首や肩に負担がかかり、肩こりや首痛、頭痛といった症状が起こります。スマートフォンの普及やデスクワークが増えたことで目立つようになってきた症状です。
ねこ首反らしによって、固まってしまった胸椎に働きかけ、頭と首の位置を修正します。
  1. 真正面を向いてイスに座り、肩の力を抜いて、やや顔を前方に出す(背中が丸くならない、また首と一緒に動かないように注意)
  2. 1の状態から、あごを後方に引き、姿勢を正す(肩に力が入らないように)
  3. 目線をできるだけ上げながら、首を後ろに倒していく。それ以上曲がらないところまで上げたら、10秒キープ
改善ポイント
  • ねこ首(ねこ背)の改善
  • ねこ首から生じていた肩こり、首こり、首痛、頭痛などの改善
「頚椎症の人は首を痛める可能性があるので、行わないでください。」(小林 篤史)

習慣化するコツ

どんなに効果的なストレッチも、続けなければ意味がありません。無理なく続けるには、“がんばらないこと”が大切。朝の支度前、仕事の合間、寝る前の1分など、生活のリズムに合わせて習慣にしましょう。

「整体の基本は“気づいたときに整える”こと。完璧を目指すより、できるときに、できるだけ。それで十分です。」(小林 篤史)

まとめ

ストレッチは、特別な運動ではなく、自分をいたわる時間。日々の小さな動作の積み重ねが、不調を改善し、疲れにくい身体をつくります。
身体を動かすことで、心も軽くなる。1日5分のストレッチから、“整う毎日”をはじめてみましょう。

「身体は、適度に、やさしく動かすほど、素直に応えてくれます。がんばらずに整える。今回紹介したストレッチもぜひ試してみてくださいね。」(小林 篤史)